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顧客満足度


顧客満足度の低い製品やサービスを販売するとどのようになるのでしょうか。顧客が満足しない製品やサービスを意図的に販売することはしないと思いますが、スタートアップでは、時間的制約や金銭的な制約から理想の完成形に到達していない製品やサービスを、販売することは決して珍しくありません。




1. スタートアップの苦悩

スタートアップや新事業は、手掛けている製品やサービスの完成形は手探り状態であり、ひとまずサービス等を市場にローンチし、そのユーザー等から評判や不満を集積し改善を行い、完成形に近づけていきます。また資本を取崩しながら事業化を目指しているケースも多く、そのような場合には資本を食いつぶす前に少しでも収益を上げたい意向が強く働くため、早い段階から製品等を販売する傾向にあります。

この結果、顧客満足度は高くない製品等を市場に販売せざるを得なくなります。




2. 事例

① サービス概要

あるベンチャーの話ですが、体に装着すると特定の作業が楽になる効果を持つ製品を製造販売している会社があります。

この製品の説明を行うと、多くの人の最初のリアクションは良い反応であり、利用価値が高いとするポジティブなものです。しかしその後、具体的な使用用途を考え始めると、この製品が実用面でいくつかの欠点があることに気が付きます。

これが最初のリアクションが良いにもかかわらず、販売面で苦戦が続いている理由です。



② 陥った困難

ある時、このベンチャーは販売をテコ入れすべく、小売価格を大幅に引下げてかつ多額の広告宣伝費を投じて製品を販売しました。その経営方針により、一時期は販売が好調となりました。

しかしこの製品を購入した顧客は、数か月以内に製品の使用をやめて倉庫にしまい込みます。もちろん、このようなユーザーの製品レビューは惨憺たるもので、その後の販売は非常に苦戦を強いられることになりました。



③ 採るべき対策

この事例から何を学ぶことができるでしょうか?


(ア) 改善無き販売

ここから学べる一つ目のポイントは、ユーザーが不満に感じる問題を解決しないうちに、大幅な販売拡大に舵を切ったことでしょう。

ユーザーの不満点を改善しないまま販売した結果、この製品は継続的に使用されないためLTV(Life Time Value)が低下し、かつ製品レビューや評判も悪くなっていきました。

これは将来の販売の可能性や利益を潰す行為であると言えるでしょう。さらには、新規獲得した顧客がすぐ顧客でなくなることは、穴の開いたバケツに水を注ぐような状態に似ており、新規顧客獲得のための多額の宣伝広告費や人件費も効率性の低いものとなっています。


(イ) 戦略なき値引き

次のポイントは、販売のてこ入れのために販売価格を下げています。この販売価格の引き下げは、「低価格戦略」と混同されやすいのですが、明確に異なります。

「低価格戦略」は、販売価格だけでなく原価も含めて考える必要があり、引き下げた販売価格以上に原価低減ができる場合に成り立つ戦略で、利益を増やすための戦略です。

この会社の場合、原価を下げる算段が立たないまま販売価格を引き下げ拡販したと考えられるので、ただの投げ売り状態に近い「戦略なき値引き」を行ったのです。

販売が苦しいと値引きに頼って売上を上げたい気持ちはよくわかりますが、「低価格戦略」と「戦略なき値引き」の違いは理解して、戦略的に行動したいものですね。




3. さいごに

顧客満足度を上げることが良い事であることは誰もがわかっていますが、そのための武器や優位性をどのように持った製品やサービスを造るのか、これが経営者の大きな役割ですね。

#Expert-CFO #シェアリングCFO


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