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資金調達時の株主間契約(後編)

投資家から資金を調達する際、投資家は投資した資金を守るために種々の株主間契約を要求することが一般的です。しかしこれら株主間契約は一定の知識がないと内容を理解できず、大きな損失につながる可能性があります。そこで投資家が要求する株主間契約について、理解を深めておきましょう。

今回はその後編で、追加で出資を受ける場合とEXITを想定した条項です。


各種株主間契約(つづき)

4. 希薄化防止条項

投資家が払込んだ1株あたりの投資額より低い価格で新たに株式が発行される場合、投資家が保有する種類株式の価値が下落しないように転換比率を上げて転換し、実質的な株価が維持されるように調整する条項です。

重要かつ論点が多い条項であるため、別の機会にしっかりと述べていきたいと思います。

5. 先買権

株主が第三者への株式譲渡をしようとした場合に、それと同様の内容で優先的に株式の買取ることができる権利です。

これは意にそぐわない株主に対し、株式が売られることを防ぐ目的に設けられる条項です。

6. 強制売却条項(ドラッグ・アロング・ライト)

投資家が第三者に株式を譲渡することを望む場合に、創業者等の持株を同一の条件で当該第三者に対して譲渡しなければならないことを請求できる権利です。

投資家はベンチャーの事業だけでなく起業家の人物や能力まで含めて出資を行うものです。しかし投資家が出資したのちに起業家が事業を売却してしまうと、投資家としては出資を引き揚げたいと考える可能性は高くなります。そこでこのようなケースを想定し、この条項を付けることがあります。

7. みなし清算条項

合併、株式交換等、支配権の移動に伴って取得した対価を残余財産とみなし、優先的に残余財産分配を受ける権利を有する者に、優先順位に従って分配する処理を認める権利です。この条項に関しては、別の機会にしっかりと触れていきたいと思います。

8. ロックアップ条項

投資先がIPOしても、VCのような大株主はIPOから一定期間株式を売却せず、継続保有する必要が生じることがあります。これは乱高下する株価を守ることや安定株主の観点などから設けられていますが、ロックアップ期間は株を売却することができなくなる点に注意を要します。

なお、ロックアップには、株主間契約に基づくものと、証券取引所の規則に基づくものの2種類があります。また更にM&Aに関するロックアップ条項もありますので、混同しないようにしてください。



まとめ

株主間契約を交渉する場合、法律専門家を伴わないとVCのように場数を踏んでいる相手には不利となるでしょう。ただ最近はスタートアップ向けにJ-KISSのように交渉事項を最小項目まで減らした契約書が無料で利用できるため、このJ-KISSをカスタマイズして使用することもコストを抑えるための選択肢になりうるでしょう。

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