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投資契約書のチェックポイント(後編)

資金調達を行う際に行う投資契約には、主に投資契約書と株主間契約書が登場することやそれぞれの役割等について、資金調達時の契約書(前編・後編)で解説しました。今回をもう少し進み、投資契約を締結するにあたりどのような点に気を付ける必要があるのか、述べていきたいと思います。


今回はその後編です。




投資契約のチェックポイント(つづき)

株式買取条項

株式買取条項は、経営者が表明保証等の投資契約の内容に違反する行為を行った場合に、会社や経営者に株式の買取を請求できる権利を認める条項です。

投資契約の違反行為による損害については、債務不履行に基づく損害賠償を請求することが可能です。しかし現実には、違反行為により投資家が被った損害の立証や損害額の算出は非常に困難でし、訴訟になれば時間もかかります。そのため、株式買取条項を定めて資金回収手段を確保しておくことは、投資家サイドからするとリスク軽減のために講じる一般的な措置となります。


資金調達す立場からすると、株式買取条項の発動する要件と買取価額の2点をよく検討する事が重要でしょう。発動要件はできるだけ厳しくすることは当然ですし、株式買取価額は不当に高額になるような算式になっていないか、十分にチェックするべきでしょう。



希薄化防止条項

希薄化防止条項は、VCから資金調達するとなるとほとんどの契約で付される条項です。すでに出資したVCからすると、その後にダウンラウンドで新規株式発行された場合の経済的損失を軽減もしくは回避するための条項です。


しかし趣旨を外れ、ダウンラウンドではなく従業員へ付与するストックオプションなども不当に制限されることあるため、このような正当な資本政策が希薄化防止条項に抵触しないように注意しましょう。またVCから資金調達する前に新株予約権やストックオプションを発行しておく資本政策を立案することも一案です。



最恵待遇条項

最恵待遇条項は、次回以降の資金調達の際に今回の資金調達の条件より有利な契約条件が含まれている場合、その契約条件をそれより前に出資した投資家に対しても与えることを規定するものです。非常に強力な内容の条項であり、次回以降の資金調達に影響を及ぼしため資金調達がしにくくなることもあります。


注意点として次の2点が挙げられます。

まず、最恵待遇条項を入れた契約を行うと、それ以降のVCからの資金調達では、この条項を入れるように要求される事になります。従って、今後の資金調達の可能性も含めて、最恵待遇条項を含めた契約とするのか判断してください。次にこの条項を契約に入れる場合は、「有利」の内容を明確にし、可能な限り具体的なケースや条件を記載するようにしましょう。



まとめ

資金調達の契約について、VC側は慣れていますが起業家はそれほど経験があるものではありません。このため最低限は自分で勉強する必要はあるでしょうし、必要に応じて法律専門家の力を借りた方がよいでしょう。


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