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希薄化防止条項(後編)



ベンチャーキャピタル(以下、VC)から資金調達する際、VCは種類株式を活用するケースが多くなりましたが、種類株式に関連する契約において理解しにくい内容の一つが希釈化防止条項でしょう。今回は希薄化防止条項についての後半となります。





I. 希薄化防止条項

転換価額の調整方法として、フル・ラチェットと加重平均法の2種類に大別でき、加重平均法はブロードベース加重平均法とナローベース加重平均法があります。



① フル・ラチェット

フル・ラチェットは、転換社債型新株予約権付社債(以下、CB)の転換価額がそのあとに発行される株式の発行価額まで引き下がるものです。


フル・ラチェット条項が発動すると、CBを転換した株主以外の株主は大幅な経済上の希薄化や議決権の低下が生じる可能性があります。条件によっては、劇的に株主持ち分の変動を招くことがあるため、研究開発関連のスタートアップで目にする程度であり、それ以外ではほとんど用いられないようです。



② 加重平均法

加重平均法に基づく調整後転換価額の算式は以下のとおりです。

式と文言ではわかりにくいのですが、結局のところ、ポストValuationを調達後の発行済み株式総数で割ったものになります。





なお、加重平均法は、フル・ラチェットよりも転換価額の下落幅が小さくなります。



③ ブロードベースとナローベースの違い

ブロードベース加重平均法とナローベース加重平均法の違いは、既発行株式数をどのように定義するか、という部分だけです。

ブロードベース加重平均法では既発行済株式数にすべての潜在株式を含めて設定するのに対し、ナローベース加重平均法の場合は普通株式および種類株式の合計であり、ストックオプション等の潜在株式は含めません。(種類株式も含めないことがあります)。

ナローベースのほうがブロードベースより既発行株式数は多くなるため、転換価額の下落幅が大きくなり、CBを転換する投資家にとって有利となります。




II. さいごに

株式価値を変えずに新規発行や潜在株式を発行する事は難しいため、エクイティファイナンスを行うと何かしらの株式価値の変動が起こるものです。しかしその中で、あまりにも許容できない株式価値の下落に備え、考え出されたのが希薄防止条項です。式の構造は分かりにくいですが、価値の激変を防止するためにある条項と理解してくと良いでしょう。




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