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ビジネスモデル研究(BASE FOOD)



「完全栄養食」を掲げるパンやパスタを販売し、2022年11月15日にIPOしたBASE FOOD。独特の目立つマークはコンビニ等で見覚えがある方も多いのではないでしょうか。完全栄養食という言葉は新しいものの、例えばカロリーメートのようにバランス型の栄養食は過去から存在した商品であるといえます。では「完全栄養食」を武器にIPOを成し遂げた原動力は何であるのか、分析していきましょう。




ビジネスモデルの概略

下記の図は成長可能性の説明資料からの抜粋となります。

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://fs2.magicalir.net/tdnet/2022/2936/20221114566617.pdf



上記の図解を見てわかるとおり、BASE FOODの業務範囲は①新商品の着想・商品の改良、②R&Dや試作品の製造、③マーケティングや販売となっている一方で、製造、物流は手掛けていません。いわゆる「ファブレス企業」という概念に近いビジネスモデルになります。

掲げるミッションを含めHPなどから受ける印象は、パンの製造にこだわりを持っていそうなイメージとなりますが、実際の製造は外部に委託しています。




ビジネスモデルの肝

① 模倣困難性

会社は成長可能性の説明資料の中で、自社の競争優位性を下記のように記載しています。

  1. タイムリーな顧客情報・フィードバック分析

  2. アジャイルな自社研究開発体制

  3. 信頼のできる提携OEMとミックス粉製造を分離することで量産化の秘匿性を確保する生産体制

  4. EC・リテールチャネルを活用した販売・マーケティング体制



ここで注目すべき点は、競争優位性を製品そのものに依拠していないことです。

冒頭にも記載しましたが、バランスの良い栄養食という考え方自体は以前から存在しており決して新規性があるものではありません。またバランスの良い栄養食として新製品を販売してもすぐに研究され真似されてしまうため、長期間にわたり差別化できるものではないでしょう。製品の特徴や機能で差別化してもすぐに他社に模倣されてしまうことは、家電製品で頻繁にみられるため、皆さんも思い当たるケースがあるでしょう。


これに対し、BASE FOODが考えている競争優位性は、無形のノウハウであるものが多く、模倣されにくいものである事がポイントです。つまり完全栄養食を自宅や工場で真似できても、BASE FOOD並みのビジネスモデルは簡単には作ることができないことになります。



② 高いPERがつくモデル

BASE FOODが考える競争優位性として明確に記載をしていないポイントとして、IPOし易くまた高値が付きやすいようなビジネスモデルの打ち出し方をしています。それは「ネット」と「サブスク」というBuzz Wordを絡めたビジネスモデルとしていることで、具体的には下記のようになります。

  1. ネットを利用して顧客ニーズを収集する

  2. ネットを販売チャネルの中心に据える

  3. サブスク制度を導入し、B2Cのフローモデルを可能な限りストックモデルに変えている。


ネットを利用する事により、顧客ニーズの母集団及びマーケットの規模が格段に大きく広くなるため、将来の販売可能性を非常に大きく感じます。また食の販売ではフローモデルの要素が大きくなりますが、サブスク制度の販売方法を導入する事によりストックモデルの要素を高め、販売の安定化を前面に打ち出しています。




ターゲット顧客層

ネット販売やサブスクモデルなどをマーケティングの中心に据えていることから、当初はネットで食料を買う行動パターンをとる20代~30代がメインターゲットだったと推測されます。しかしコロナ禍の影響により、全世代でネット購入が加速しターゲット顧客層は広がったことは、この会社の場合は強運の追い風だったのではないでしょうか。




損益数値

下記はIPO時のⅠの部に記載されている経営指標の一部を抜粋したものです。


① 売上

まず売上で目を引くのは、直近2年の急激な拡大ペースでしょう。第4期~第6期間のCAGRは、実に360%にもなります。この高い成長率は、実店舗を自社で開拓し1店舗ずつ商圏をおさえるような販売方法や、自社で製造工場を順次立ち上げていては、とても実現することができないスピード成長と言えます。

また2022年2月は、従業員数37名(他、平均臨時雇用者数19名)で55億円の売上ですから、一人当たり売上高は約1.5億円となります。従業員人数を必要とする製造部門を抱えていては困難な高い水準であり、無形のノウハウで勝負する持たざる経営を実践している会社ならではと言えます。



② 費用

費用の中でも最も目を引くのが広告宣伝費となります。2022年2月決算の販管費全体は37億円ですが、広告宣伝費に16億円にもなります。

赤字が継続している理由は、この多額の広告宣伝費が主要因の一つと言っても過言ではないでしょう。今のところは、SNSやマスメディアへ多くの広告宣伝を依存することで売上の急成長が実現できている可能性が高く、どこかの時点で広告宣伝費に依存する販売方法からの脱却が必要となります。この戦略の変更のタイミングがいつであり、その後はどのような販売戦略を採るのか楽しみであります。




さいごに

バランス食を武器にIPOを達成した原動力は、ITを駆使しかつコア・コンピタンスを製品に設定していないことが、理由として挙げられます。ITとサブスクを駆使し、市場の受けを良くしていることも上手い戦略です。しかし赤字上場であることは否めず、これからいかに黒字化およびマネタイズを達成していくのか、楽しみな企業であるといえます。




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