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デジタル課税、ミニマムタックス


「デジタル課税」という言葉をご存じでしょうか。世界的に有名なIT企業が、支配的なプラットフォームを構築し莫大な利益を上げているにもかかわらず、本拠地を税率の低い国や地域に移すことにより課税逃れをしているが批判されており、OECDが連携してこれに対応した課税の仕組みをつくろうとしているものです。厳密には「デジタル課税」と「ミニマムタックス」という二本柱で構成されます。それでは今回はこの新国際課税制度について見ていきましょう。





1. 新課税制度の概要

現行の国際上の課税方法は、ある国にオフィスや工場などの物理的な拠点がある場合にその国で課税ができますが、物理的拠点がない場合は外国企業には課税できないことが原則となっています。


インターネット企業は、本社や拠点を置く場所は制約が少なく、世界各国で事業を展開することが比較的容易であるため、このような課税形態が実情にそぐわないとの批判があります。また課税の仕組みは国ごとでつくることが原則であり、複数の国で事業を展開する企業に対してどの国でどのように課税するのか、税収を確保したい各国の思惑もあり複雑な問題となっています。


そこで、経済協力開発機構(OECD)はこれらの問題を調整し新たな課税形態をつくることを目指しており、OECDを含め130以上の国や地域が参加するものになりそうです。この課税制度は「デジタル課税」と「ミニマムタックス」に大別されます。


これ以降具体的な内容に触れますが、執筆点で最終確定ではないため、数値等は変更になる可能性がある点をご理解ください。




2. デジタル課税

①課税対象企業

デジタル課税の対象となる企業は、売上高200億ユーロ超(執筆時点約2.6兆円超)かつ利益率10%超の多国籍企業グループとなります。ただし、資源関連、金融業の企業は除かれます。


事業実態がある企業は一般的に本社や拠点を持っているため、IT企業以外はこの新課税制度の対象にならないと考えられます。



②配賦方法

収益の10%を超える部分(残余利益)の25%を、市場国が受け取ります。この市場国は、課税対象企業グループが100万ユーロ以上の収益を得ている国を指します。


この結果、市場国で課税された場合、対象企業の親会社等で減税するなどして二重課税とならないように調整されます。


  



3. ミニマムタックス

①課税対象企業

ミニマムタックスの課税対象となる企業は、売上高7.5億ユーロ超の多国籍企業グループで、ある国に進出している子会社等の実効税率(=税額/所得額)が最低税率15%を下回る企業が対象となります。ただし、国際海運業は対象から除かれます。課税対象となった場合、本国の親会社等のグループ内の別法人に上乗せ課税されます。



②税額

最低税率15%がトリガーとなっていますが、これはある国に進出している子会社等の実効税率で考えます。多国籍企業ともなれば税効果会計を適用しているはずなので、一時差異はある程度は年度ごとに調整できているという考え方です。


ミニマムタックスの趣旨は、実効税率を最低税率の15%にあわせる目的にあるため、上乗せ税額=課税所得×(15%―実効税率)となります。この上乗せ額を親会社等のグループ内の別法人が負担します。





4. 適用時期

デジタル課税やミニマムタックスは、2023年の適用を目標に進められています。




5. 最後に

世界的なIT企業が莫大な利益を稼ぎながら税金を支払っていないため、国や国民が批判的な目を向けることは、仕方ないのでしょう。また、移転価格税制のように国同士で税金の取合いを原因に揉めるより、有効な国際的な取り決めが出来ることも良い流れと感じます。



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