ベンチャー企業がベンチャーキャピタル(VC)やエンジェルから資金調達した、との話をよく耳にします。しかしいざ資金調達を行うとなると、どのような知識や考え方をインプットする必要があるのか分からない方もいることでしょう。そこで今回はVC等から資金調達をするにあたり、最低限知っておくべきことを解説したいと思います。
資金調達の意味
① 第三者から資金調達する意味

創業者に資金が潤沢であれば手金で事業を営むことが出来ますが、そうでない場合は他人の資金を使用して事業をつくりそして拡大する必要に迫られます。この他人の資金を会社に入れることが資金調達です。
会社設立時に創業者が行う出資は、自分のお金で自分の会社をつくる行為との感覚であること通常です。これに対し、第三者からの資金調達は、「株主になる権利を発行するのでそれを買ってください」と赤の他人に売り込むイメージに近いです。つまりVCやエンジェルに株主になってもらい、相応のお金を振り込んでもらう感じですね。
ただ、「株主になる権利の販売」と「出資」とを比較すると、払戻しの処理について大きく異なります。権利を買ってもらうだけであれば、基本的に払戻しの処理は生じません。これに対し出資は払戻し(リターン)を目当てにする行動なので、その考え方は少々複雑です。スタートアップの事業が順調に進んだ場合はEXITと呼ばれる一定のゴールを迎え、順調にいかなかった場合は種類株式が絡む終わり方を迎えることが多くなりますが、これについては一大論点となるため別の機会に触れたいと思います。
因みに会社法の想定は、「株主の資金を経営者が預り、その預かった資金をもとに事業を大きくし株主に還元する」委任の関係を想定しています。
② バリュエーション
会社価値を評価することをバリュエーションと言いますが、VC等から資金調達を行うにあたりバリュエーションは重要な情報のひとつとなります。またバリュエーションにより、その会社の一株あたりの価値も算定されます。
なお、バリュエーションを行うにあたり本来は、「事業価値」、「企業価値」、「株式価値」と3つの価値の考え方を理解する必要があるのですが、今回は入門編のため細かいことは気にせず「会社価値」とザックリ表現していきます。
バリュエーションを企業価値評価の理論に用いて行うとなると精緻な事業計画が必要となるのですが、スタートアップの事業計画は実現可能性の点で信頼度が低いものです。従って、企業価値評価の理論に基づくバリュエーションをしても、算定した結果の精度は高くないため手間とお金をかけてする意味は低いものです。その結果、実務上は、経営者とVC等の交渉(言い値ベース)でバリュエーションを決めることが多くなります。

③ 新規発行株数
増資を行うにあたり何株の株式を新規発行するのか決める必要がありますが、その決め方は下記の2通りの考え方に基づくことになります。
ⅰ)調達額から決定
まず調達したい目標金額を資金繰りや投資計画をもとに設定します。その後、バリュエーションにて一株あたり株価を算定し、新規発行株式数を決定する方法です。

ⅱ)シェアから決定
創業者の株式保有状況からVC等に譲っても良いシェアを決め、そのシェアに相当する株式数を決定する方法です。

なお、創業者が保有しておくべき議決権比率は下表の情報を参考に、資本政策で決めることになります。資本政策はどの時点で誰にどれだけ株式等を渡していくのか決定するためのものであり、資本政策を一度誤るとなかなか取り返しがつかないため、専門知識を持つ人と相談しながら決めていく事をお勧めします。

今回は、第三者から資金調達することの意味、バリュエーション、新規発行株数の決め方について、ぜひおさえてもらいたいです。