MBO(Management Buyout)や不動産に関連する案件をこなしていると、SPCを利用するスキームを組むことがあります。しかしなぜSPCを活用するのか理解していない方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、SPCについて述べていきたいと思います。

1. SPC
SPCの正式名称は、「Special Purpose Company」の略称で、日本語では特別目的会社と呼ばれます。いわゆるペーパーカンパニーに近いと理解しておけば、イメージしやすいかもしれません。
2. SPCのメリット
なぜSPCが必要となるのでしょうか。それを理解するにはまず、下記にあげるSPCのメリットを知っておく必要があります。
1. 調達力をカバーできる
2. 返済力をカバーできる
3. 税務上の理由
4. オフバランス化できる
5. 倒産隔離ができる
これらのうち最も重要なメリットとなるのが、「調達および返済」つまり資金調達に関してでしょう。
4.および5.は不動産証券化や信託受益権を活用するスキームでメリットとなることが多いものの、MBO(Management Buyout)に関するスキームでは最終的にSPCと買収対象とする会社が合併することが多いことから、メリットとならないことが多いです。
3. SPCのデメリット
SPCを活用する場合のデメリットも当然あります。
1. スキームが複雑
2. コストがかかる
スキームが複雑であるため専門家の支援を活用しないとなかなか実行が難しい面があり、実行にあたり弁護士、公認会計士、信託銀行、債権回収会社などが登場します。この結果、専門家等の報酬が高くなるため、一定規模の案件でないと費用対効果の観点から割りが合わなくなります。
4. 資金調達のメリット
Expert-CFOは企業にCFO機能を提供することを生業としているため、MBOは経験豊富である一方で不動産の取引は強くありません。従って本記事はこれ以降、MBOに関するSPCに絞って解説していきます。
まずSPCの最大のポイントは、個人ではなく法人で資金を調達するため、調達力を向上させることが出来る点でしょう。会社を売買するとなると多額のお金が必要となることが多く、個人の信用力だけでは資金調達しきれません。
この点SPCスキームは、資金を集めたのちに買収対象の会社と合併し、対象会社の資金や将来キャッシュフローで返済や配当を行います。このため法人の財務力や将来獲得するキャッシュフローを信用に用いることが出来ます。金融機関の立場からは、SPCそのものよりも買収対象企業にローンを貸付けることになるわけです。
SPCスキームを活用することにより、個人の信用力に法人の信用力が保管される理由です。
5. MBOの場合
① 買収対象会社が返済
MBO(Management Buyout)の場合、SPCを設立のうえ買収対象会社の株式を買受け、買収対象会社と合併するスキームを採用する事が一般的です。
もし、SPCを利用することなく事業承継する役員が個人で借入し、買収対象会社に連帯保証させるとどうなるでしょうか。役員の返済力にくわえて買収対象会社の保証がつくため、良さそうに見えます。
ここで、一義的には役員が返済するのですが個人の財力であるためすぐに返済困難となりやすく、買収対象会社が金融機関に返済することになります。そうなると役員から買収対象会社に返済義務が生じます。しかし役員は既に金融機関に対し返済が困難となっているため、買収対象会社に返済することも現実的には難しいでしょう。
これに対しSPCスキームは、買収対象会社が金融機関へ返済する契約となります。ただし、事業承継する役員に保証義務が課されることもあります。結果として、第一返済義務を買収対象会社の信用力に課すことが出来るようになります。
② 税務メリット
MBOの場合、SPCを活用せず対象会社が株式を直接買い入れると、いわゆる自己株式の購入となり、株主の属性により課税関係が変わることがあります。その結果、創業者のような大株主に「みなし配当(総合課税)」が課される可能性があります。総合課税は段階的に税率が高くなる仕組みであるため、大株主は相当額の課税をされることもあり得ます。
この点、SPCスキームを活用する場合、大株主も株式譲渡として譲渡益に約20%の課税で済むため、税務メリットがあるのです。
6. さいごに
職種によってはほとんど関わることの無いSPCですが、このような特殊な論点があることを知っておけば、役に立つ日が来るかもしれません。困ったことがありましたら、Expert-CFOへ遠慮なくご相談ください。
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