CFOは非常に高い専門性が求められる一方で、特定の資格試験に合格したり、特定の学科を修めたり、研修を受けたりすれば、必ずなれるというものではありません。
現にCFOとして活躍している方々の経歴を見ると、会計士などの有資格者やMBAホルダーもいれば、資格などはなくとも経営企画や経理・財務の豊富な実務経験をもとにCFO業務をする人まで、実に様々です。CFOとして、経営管理についての高い専門性(知識やスキル)が求められることは明らかですが、そのなり方は個人の資質と経験により、非常に多様性があると言えます。今回はその後編となります。
CFOになるための準備②ー自分のCFOとしての現在地を把握する

CFOの8つの業務が分かったら、今度はCFOとして自分自身を分析してみましょう。
ステップ1:自分自身の現状を客観的に評価する
「中小ベンチャーCFOの全体像」の8つの象限に沿って、自分の経験やスキルのたな卸しをしてみましょう。
ステップ2:自分に足りない経験やスキルを明確にする
特にCFOの主要業務(1.全体管理、2.PLCF改善、4.資金調達)のうち、不足している経験やスキルを明らかにします。今の職場で求められる役割や担っている業務、働き方も踏まえて、今後経験するであろう業務と、経験できない業務も加味して考えてみましょう。
ステップ3:足りない経験やスキルを埋める方法を考える
ステップ2で明らかにした不足する経験やスキルを身につける方法を考えます。とはいっても、いずれも経験を積んでスキルとして使いこなせる専門性を身につけるには、それなりの時間がかかるものです。先にご紹介した8つの業務をすべて一人でできる必要はありませんが、CFOとしての判断や解決策に織り込めるよう、全体の概要は押さえておくようにしましょう。そのうえで、CFOの主要業務については「できる」レベルを目指し、その他の業務については「誰に何を頼めばよいか」判断ができるレベルを目指しましょう。また、ギャップを埋めるための方法は、「知識のインプット」だけではありません。必要な「経験を積める環境を作る」という視点でも考えてみましょう。
勉強方法について
自分の経験とスキルをたな卸しした結果を基に、自分に必要な知識をつけ、経験を積みましょう。
CFOの主要業務(1.全体管理、2.PLCF改善、4.資金調達)を優先してしっかりと知識とスキルを身につけましょう。また、自分の経験や得手不得手だけではなく、「自分が今関わっている/あるいは関わりたい業界」など、外部環境の変化も踏まえて、戦略的に勉強にかけるリソース(時間やお金)を割り振りましょう。

知識面では、経営を体系立てて学べるMBAに通ったり、コンサルタントの国家資格でもある中小企業診断士の勉強をするという道もあります。あるいは、経営戦略やファイナンス、アカウンティングなどに特化した講座を受講して学ぶこともできます。また、書籍の活用も手軽にできるのでおすすめです。(前述の「中小ベンチャー企業CFOの教科書」(高森厚太郎著)は、中小ベンチャー経営やCFOの主要な業務について体系立ててまとめられており、頭の整理に役立ちます)
経営企画や財務・経理はもちろん、その他のバックオフィス業務について幅広く経験を積める機会があれば手を挙げたり、他の人の業務をサポートしたり、社内の他部署・ポジションへ異動を願い出る、今の会社では経験するチャンスがなかなか得られない場合は転職も含めて検討する、大企業で働いているなら中小企業で働いてみる…時に思い切った選択も必要かもしれません。
このように、CFOになるための勉強方法としては、「知識」と「経験」の両輪を意識して、使える「スキル」にしていくことが大切です。
CFOとしての専門性を身につけるには、相当の知識と経験が必要であり、流れに身を任せていてなれるものではありません。CFOになるために「自分自身のキャリアは作るもの」と捉え、必要な知識とスキルを身につけられるよう主体的に勉強し、環境を整えていく姿勢が必要です。
いつ何をインプットするのか、どうやってアウトプットしていくか、「CFOとしての価値を高める」選択肢を意識して積み重ねていくことで、自分のCFOとしてのキャリアを作っていきましょう。

執筆者プロフィール:溝上愛
一般社団法人日本パートナーCFO協会会員
日本赤十字九州国際看護大学卒業。赤十字病院勤務、医薬品開発業務を経て、現在は農業法人向け投資育成会社でコンサルタントとして農業経営者の支援に携わるかたわら、パートナーCFOとして家業(金属加工業)の事業承継支援を行っている。
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