SPACは特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Company)のことで、一般的事業会社と異なり自ら事業を行うことはせず企業買収するための箱となる会社であり、買収を成功させるとターゲット企業と合併し消滅します。
現在、日本ではSPACが上場することは出来ませんが、過去に日本市場でも解禁が検討されたことがあるそうです。アメリカ市場で注目が高まりを考えると、再度、日本でも解禁の動きが起きる可能性は十分考えられます。

1. SPACによるIPO
SPACがIPOに至る大まかな流れは、以下の通りとなります。
① ファウンダーがSPACを設立します。
② SPACに投資家から資金を集め、事業実態が無い状態でIPOします。
③ IPO後、買収するターゲット企業を探し、買収を実施します。
④ SPACと買収された企業が合併します。買収された会社が存続会社となり、上場会社と
なります。
2. SPACに関するルール
アメリカ市場ではSPACによるIPOは以前から利用されている手法であるものの、不正が多いことが問題視されていました。しかし、SPACは1993年に下記に記載するような種々のルールを設け、投資家保護を行うようになってからは資金が流入するようになっているようです。
① IPO時に調達した資金の9割以上を信託し、それ以外は運転資本として運用する。
② IPOから12~18ヵ月の間に買収のIRし、24ヵ月以内に買収を完了する必要がある。
③ 買収に失敗した場合、投資家に利息を付けて返還する。
④ 買収企業の選定は、20%以上の株主の同意が必要である。
3. 資金が集まる理由
アメリカ市場でSPACに投資家の資金が集まる最大の理由は、買収が実現しなかった場合に投資した資金が返還されることが保証されている、という安心感でしょう。つまりSPACに関するルールに従い、最大2年程度で利息をつけて投資資金の返還を受けることが規定されているため、余剰資金の受け皿になっているようです。
その他、SPACは著名な人物により運営されることが多く、その人物の名前や能力に期待し、投資家が資金を預ける傾向にあるようです。
4. SPCのメリット・デメリット
① メリット
まず買収される企業にとり、IPOを相対的にはやく実現することができるというメリットが挙げられます。既存のIPOでは審査の際の条件が厳しく、いわゆるIPO準備に膨大な時間と手間がかかります。これが早く資金調達を行いたいスタートアップ企業には障害となっていました。SPACではこの負担が軽くなるため、被買収企業に大きなメリットとなります。
次に個人投資家にとっては、実質的に大きなリターンを手にする可能性のある未公開株式に投資できるという、メリットがあります。ベンチャー投資は、機関投資家やエンジェル等の限られた投資家しか行えないものですが、一般投資家にとり小額から未公開株式に投資できる魅力があります。
② デメリット
まず、SPACに買収される企業は、通常の上場企業と比較すると内部統制の整備が不十分であったり情報開示が不十分であったりします。このため上場後に不祥事等が生じて株価が急激に下落するリスクは相対的に高くなります。
次に、通常はIPO承認が得られないような会社が、SPACを悪用して上場する可能性があります。つまり、反社会的勢力および風営法関連の企業のように通常のIPOができない企業が、緩い審査を通りSPACと合併する事により上場企業になる、いわゆる裏口上場ができてしまう可能性があります。
5. まとめ
一般的な企業にとり株式上場の目的は、会社の知名度の向上、信用力の向上、資金調達による更なる成長の加速等ですが、このSPACはいずれの目的にも当てはまりません。日本市場でSPACによる上場という制度を受け入れるためには、株式市場の関係者が有する価値観の変革が必要ではないでしょうか。