2020年IPO総括

更新日:2020年12月30日


2020年の年の瀬をむかえ、2020年の振返りや2021年の目標を考える方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、2020年のIPOマーケットについて総括してみます。





1. IPO件数の推移

まず、2014年から2020年までのIPO件数の推移を見てみましょう(グラフ1)。2020年のIPO件数(Tokyo PRO Marketおよびテクニカル上場含む)は、過去と比較して多い水準であったことが分かります。今年の株式市場は日経平均がバブルを超える最高値を記録しており、全体的に高値であったことを考えると、コロナの蔓延というネガティブな影響があってもIPO件数が多くなったことは納得がいくでしょう。




次に、2020年のIPO件数を月別に表したものがグラフ2となります。月により大きくIPO件数がばらける印象ですが、3月と12月が活況だったことが分かります。これに対し4月から8月辺りの上場件数は低調となっています。振り返ると4月7日に東京都とその近辺の県で緊急事態宣言が出され、4月16日には全国に拡大されたため、ロードショー等のIPOに必要な手続きが円滑に実施できなくなるケースや、経済の見通しが不安であるためIPO手続きを中断するケースが増えたことが影響したのではないかと推測されます。




2. 2020年の特殊性

① 上場承認後のIPO中止・延期

2020年のIPOマーケットがコロナの影響を大きく受けたこと端的に示す数値が有ります。それは、上場承認が下りていたにもかかわらずIPOを取りやめた企業の数です(表1)。IPOを取りやめた企業数は、例年であれば0~5件程度であるものの2020年は18社にものぼり、その時期は3~4月に集中しています。この時期に上場承認が下りた企業はコロナ問題が表面化する前に上場申請を行っていたものの、上場承認が下りる頃には問題が大きくなり将来の見通しが立たず、苦渋の決断を行ったのではないかと推測されます。


3~4月にIPOを取りやめた18社のうち10社は、2020年のうちに再度上場申請しIPOをしていることからも、コロナによる先行き不透明な外部環境が会社の意思決定に大きく影響していたのでしょう。一方で、IPO取りやめた企業のうち8社が再度上場をしていないことから、もしコロナの影響がなければ2020年のIPO件数はあと8社多くなっていたのかもしれません。



② PCR検査陽性患者数

公募売出価格に対するIPOしてから1か月後の株価の高騰を「1か月後の高騰率(=1か月後の株価 / 公募売出価格)」として、この1か月後の高騰率を月別に並べたものが表2です。表2は、IPOした月の高騰率として表示しています(例えば2月にIPOした場合、2月の初値とその1ヶ月後の株価を比較し、2月に記載している)。


なお、Tokyo PRO MarketのIPOとテクニカル上場はこれ以降の集計には含めていません。Tokyo PRO Marketは株式の流動性が低いため株価が市場の適正価格を表していない可能性が高いこと、テクニカル上場は組織形態が異なれども直前まで上場していたため純然たる新規上場とは見做せないことが理由です。また、執筆時点で株価が入手できないIPO案件に関しては、高騰率の計算に含めていない点もご留意ください。


表2の高騰率を見ると月によりかなりばらつきがあり、この推移データだけで何らかの因果関係を見出すことは少々難しいです。


そこで高騰率を1ヶ月ずらしたトレンド(例えば2月にIPOした場合、2月の初値とその1ヶ月後の株価を比較し、3月に記載している)と、PCR検査の陽性者数とを比較してみよう(グラフ3)。


まず、3月~5月の高騰率が7月以降の月の高騰率より低くなっているのは、コロナの第1波により投資家の心理が冷え込んだことが大きく影響していると推測されます。

また、5月および9月の高騰率はその前後の月より高くなっていますが、これらの月はPCR検査の陽性者数がピークアウトし減少に向かっている月です。これに対し、7~8月および10~11月のように陽性者数が増加傾向にある月は、高騰率が減少傾向を示している事が分かります。PCR検査の陽性者数は定量化されたわかり易い指標であるため、投資家の心理に大きく影響を及ぼしている可能性が高く、2020年の株価に対する影響の大きい外部環境要因だったと言えるのではないでしょうか。




3. 公募売出比率

① 公募売出比率と1か月後の株価/公募売出価格の関係

前述のように2020年はコロナの蔓延という例年には見られない外部環境要因がある事は頭に入れつつ、公募売出比率が株価に与える影響を考察していこう。ここで公募売出比率とは、公募売出株数が公募売出後の発行済株式総数に占める割合のことを言います。

公募売出比率と1か月後の株価/公募売出価格の関係を散布図にしたものがグラフ4です(2020/11/19上場のアララ株式会社までのデータとなります)。証券会社のレポート等で初値/公募売出価格を比較ししたものを目にすることが有りますが、ここではもう少し期間を長くした1か月後の株価で検証してみます。




まず、散布図の近似直線を見ると右肩下がりとなっているため、公募売出比率が増加すると1か月後株価/公募売出価格が低くなる傾向が読み取れます。マーケットに放出する株数が多くなれば需給の関係は供給過多になるため、株価が下がる傾向を示すことは納得がいく結果かもしれません。


また、1か月後株価/公募売出価格が400%を超えたのは8社あり、10%前後と25%前後の2グループに大別できます。10%前後のグループは安定株主を上手く活用し市場に放出した割合を少くしたことで需要が供給を遥かに上回った事が要因となっている可能性が有ります。これに対し、25%前後の3社はいずれもマザーズの上場審査基準を充たすために流通株式比率の基準である25%前後を市場に放出していると考えられ、市場への供給が多かったにもかかわらず1か月後株価/公募売出価格が400%を超えていることから、市場は高い評価をしたことが伺えます。




② 1か月後高騰率とIPO会社数の関係

次に、1か月後高騰率とIPOした会社数との関係をまとめたものが表3となります。

100%未満となっているのが19社あり、1か月後に公募売出価格を下回る会社数が29.7%ある事を意味します。これは換言すると、2020年はIPO銘柄を公募価格で買うことが出来れば、1ヶ月後には70.3%の勝率だったとも言えるでしょう。特に250%以上となる会社数が20社と31.3%もある事を鑑みると、投資家にとってIPO銘柄投資は短期で儲かる魅力的な投資なのかもしれません。



4. まとめ

2020年を振り返ると日常生活は当然、IPOマーケットや株価市場もコロナの影響を色濃く受けたと言えるでしょう。もうしばらくコロナの影響は続きそうですが、できるだけ早くかつての日常を取り戻せる事を願っています。

それでは良いお年を!



【出典】

新規上場情報: 日本取引所グループHP

https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/issues/index.html

PCR検査陽性者数:厚生労働省HP

https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html


【参考情報】



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