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資金調達時の契約書(前編)

ベンチャーキャピタル(以下、VC)から資金調達をする際、かなり分厚い契約書に基づいた契約を結ぶことになります。契約書には契約条件や権利等非常に重要なことが書かれているため、その内容を正確に理解しないと大きなリスクを抱えることもあります。今回は資金調達時の契約書について記載して行きます。


投資契約書の概要

① 投資契約

資金調達の際に関連する代表的な契約書として、投資契約書と株主間契約書があげられます。これらに加え、みなし清算条項や同時売却請求権といったM&Aになったときに関する規定を中心に別途作成する財産分配契約書を作成することもありますが、これらの内容は株主間契約書に記載されることが多いため、今回は財産分配契約書については省略します。


投資契約とは、投資家が株式を取得する際、投資を実行する条件や約束を定めた契約のことをいいます。投資契約書に記載される投資契約の内容は、主に以下のような内容が記載されます。

・ 投資に関する基本的な事項についての内容

・ 投資の前提条件に関する内容

・ 株式に関する内容

・ 会社経営に関する内容

・ 情報開示に関する内容

・ 投資家のExitに関する内容

・ 一般条項に関する内容


② 株主間契約

株主間契約とは、投資実行後の主要な投資家と発行会社および創業株主との権利義務等を取り決めた契約のことをいいます。株主間契約書に記載される株主間契約の内容は、主に以下のような内容が記載されます。

・ 会社経営に関する内容

・ 情報開示に関する内容

・ 投資家のExitに関する内容


契約書の名称

投資契約書の名称は、下記のようにいろいろと異なる名称で呼ばれることがありますが、その中身は同じと考えて差し支えありません。


・ 株式引受契約書

・ 社債引受契約書

・ 株式譲渡契約書


J-KISS

① J-KISSの概要

最近はスタートアップが資金調達時に時間と手間がかからないように、J-KISSという仕組みが使われるようになりました。これはスタートアップが交渉に時間とエネルギーを割くことを極力減らし、資金調達を簡単に行えるようにするための仕組みです。Coral CapitalというVCがひな形を公開しており、誰でも自由に使うことができます。

https://coralcap.co/2016/04/j-kiss/


② 特徴

J-KISSには資金調達の際の交渉の手間を減らす趣旨があるため、交渉する項目は2つのみに限定しており、他の項目はすでに決められています。また契約書のひな形が一般公開されおり、そのまま使うことも一部カスタマイズすることもできます。これより契約書を作成するにあたり、専門家に依頼するコストも安く済みます。

J-KISSはコンバーチブル・エクイティに分類されるため、新株予約権の一種としてスタートアップのバランスシートには資本の部に計上されます。これは転換社債と異なり債務超過防止に一役買います。

もう一つ大きな特徴として、出資時は1株がいくらか決まっていない点があげられます。株価が決定するのはシリーズAの調達時であり、シリーズAの株価をもってシリーズA優先株に変わることになります。この特殊な処置は、スタートアップ時の株価を決めるのは難しく、またそこに時間とコストを割かないようにするためです。


今回は投資契約書と株主間契約書について触れていきました。次回は投資契約と株主間契約の関係について記載したいと思います。

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