資金繰り管理でCFOがすべきこと(後編)

資金繰り管理を誤り資金ショートを起こしてしまうと、会計上は黒字であっても倒産することがあります。このように資金繰りの重要性は前編で触れましたが、それではどのようにして資金繰りを改善すればよいのでしょうか。



資金繰り改善策

1. シナリオ・プランニングの実施

CFOを含む多くの経営者は、会社の戦略や将来計画を考える際、将来の動向に関して複数のシナリオを想定することが多いと思います。まさに、潜在的な要因を含め起こりうる将来の事業環境についての認識をシナリオ化しておくという、「シナリオ・プランニング」をしておくことに他ならないでしょう。


例えば事業計画を作成するのであれば、複数のシナリオのうち平均的なシナリオやポジティブなシナリオを用いることが多いと思いますが、資金繰りに関してはワーストシナリオにも対処できるように資金計画を立案しておく必要があります。


このように複数のシナリオ・プランニングをしっかり行い、これを基に種々の経営判断を行うプロセスは、資金繰り管理の場面に限らず、経営者として経営判断を行うあらゆる場面で求められる能力でしょう。



2. バッファーが重要

月次ベースの資金繰り表を作成している場合、その資金繰り表の各月末残高(翌月繰越金)を非常に重要視すべきです。多くの会社では月末残高(翌月繰越金)が、翌月上旬の支払総額に一定のバッファーを加えた金額以上であることを確認し、資金繰りが安全だと判断しています。つまりバッファー額の決定方法が資金繰りの安全性に大きく影響することになります。


不確実性が高い環境下においてCFOが将来の動向についてワーストシナリオを想定すると、バッファーは必然的に多額に設定することになります。バッファーの決め方は、会社ごとに異なりまたCFO個人のノウハウでもあるため、一概にどの方法がベストということはできません。ただワーストシナリオを想定するのであれば、赤字が継続し(①)かつ得意先に対する債権が貸倒れる(④)状況を耐えられるほどバッファーを用意しておくことが目安になるかもしれません。このワーストシナリオに備えるためには、例えば経費削減や設備投資の抑制等により資金を社内に積増すようにする、金融機関とのリレーションを良くしすぐ融資してもらえる関係を構築しておく、すぐに換金できる有価証券等をライフラインとして保有するなどが挙げられます。


一方で、ワーストシナリオに備え活用しない資産を社内に積み増すと、ステークホルダーは必要以上の無駄な資産を社内に蓄えていると判断し、資産を有効活用して利益を多く獲得するように要求してくることがあります。このため社内に活用していない資産を保有している理由を明確に説明できるように、理論武装することや基準等を整備しておくことも、併せて必要となるでしょう。



3. 差異分析こそノウハウの種

資金繰り表はつくったら終わりというものでは無く、実績が判明した段階で事前に立てた予測と実績を比較し、両者の差異を分析することが重要です。その差異の分析を通じて把握した差異の原因について、今後の資金繰り表を作成する時に活かすというPDCAサイクルを回すことにより、資金繰りに関する経験やノウハウを貯めることができます。したがって、資金繰り表を作成したことで満足せず、予実の比較から差異の原因を解明し、その原因を資金繰り表に反映して精度を高めるところまでするべきでしょう。


企業によっては、CFOや経理部長が資金繰りを管理している事が多いですが、社長や代表が自ら資金繰りを手掛けてみると知らなかった課題が見えてくる事があるため、現在の不確実性の高い環境を乗り切るためにも定期的に資金繰りを作成してみることをお勧めします。



4. 与信管理の改定

外部環境の不確実性が高くなるに合わせて与信管理基準を改訂し、得意先の与信額を引き下げることも、対策の一つとして挙げることができます。得意先に対する債権額を引下げておくと、当該得意先が支払いを遅延した場合や支払い不能となった場合において、貴社の資金繰りに与える影響を限定的に抑えることが出来ます。与信管理を改定するにあたり、財務情報を入手することができる取引先であれば、適時に財務情報を入手のうえしっかり財政状態や損益の状況をチェックするようにします。


しかし得意先の与信力を判断するにあたり、早期に取引先の情報を得ることが出来る方法は、業界内の評判を収集することに勝るものは無いでしょう。このため日頃から業界内の人脈を大切にし、コネクションを維持しておくことは、非常に大切となります。



5. リーダーシップの発揮

外部環境が急激に変化する状況下では平時のとき以上に、「管理業務」を行う管理部長のような役割だけでなく、状況の変化を先読みする「経営者としての能力」がCFOには要求されるでしょう。これは正に、ジョン・コッターが、管理能力と共存しつつもこれを抑制・補完し、変革を実現するリーダーシップのモデルと提唱した変革リーダーシップですね。CFOとしてリーダーシップを発揮し、社内に抵抗勢力がいようともコストカット等の施策を進める、タフなマインドが必要となるでしょう。


さいごに

外部環境が安定しているか不確実であるかに拘わらず、資金繰り管理は企業にとり非常に重要なテーマです。資金ショートすると企業の倒産と直結するだけに失敗が許されない業務であるため、資金繰り管理の大切さを再度見つめ直しても良いかもしれません。また資金繰り管理で悩んだ際には、Expert-CFOへ相談する選択肢もあります。


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