資本政策(㈱JMC)


資本政策の事例研究として、今回は株式会社JMC(以下、JMC)を見ていきます。IPOに至るまでの過程に焦点をあてて考察するため、IPO後に始めたCT事業などは対象としていません。当時最先端とされた3Dプリンターと成熟産業の鋳造事業の組合せにより、IPOを達成した事業ポートフォリオの組み方は、勉強の価値があると思います。




1. 会社沿革

1992年に有限会社ジェイ・エム・シーを設立し、1999年に株式会社ジェイ・エム・シーへ組織変更するとともに、3Dプリンター事業に参入しています。2006年に鋳造事業を行う有限会社エス・ケー・イーと合併し、砂型鋳造法による鋳造事業を開始しており、2014年に株式会社JMCへ商号変更しています。JMCのビジネスは、3Dプリンター事業を最初に手掛け、鋳造事業を後から買収した流れとなる点は面白いですね。その後、2015年にHEARTROID(ハートロイド)を開発し、2016年にマザーズにIPOしています。



HEARTROIDは一時期話題になったプロダクトであり、⼼臓カテーテル治療に携わる医師やデバイスメーカー向けのトレーニング/検証システムを、3Dプリンターで作成するものです。 患者のデータから3Dプリンターで患者と同じ心臓の模型を短時間で作ることが可能となり、実際の施術前にトレーニングを行うことが出来るため、施術の成功率を高めることに貢献します。





2. 業績の推移

JMCは第23期(2016/12期)にマザーズにIPOしていますが、IPOに至るまでの売上および当期純利益の推移はおおむね右肩上がりとなっており、かなり理想的な損益推移となっていることがわかります。


【業績の推移】                         

出典:Iの部



IPOする直前期末(2015/12期)のセグメント別損益は、下記のようになっています。JMCは3Dプリンターやハートロイドのイメージが強いですが、売上および利益いずれも鋳造事業が柱になっていることがわかります。


【セグメント情報】               (単位:千円)

出典:Iの部




3. 資本政策

① 第1回目外部出資

2012年11月にJMCとして初の外部からの資金調達を、JAICからA種優先株式を発行することで1億円を調達します。資金使途に関する対外的なアナウンスは、「鋳造事業の生産力向上、医療手技をトレーニングするための製品の海外展開を図るため」と、なっています。実際、翌年2013年にコンセプトセンターに第3期棟を増設されており、熱処理工程を内製化しているので、これに投資されたものと推測されます。

このA種優先株式は、2014/8/22と11/28にJAICから役員および従業員へ譲渡され、普通株式に転換されています。その結果、この時点でJMCの株主は役員および従業員のみとなっています。



② 第2回目外部出資

2014/12/19および12/29にて、DCIハイテク製造成長支援投資事業有限責任組合他5ファンドから合計4億円を資金調達しています。合計で約27%のシェアをVCに渡したことになり、資本政策上は大きな分岐点を迎えたといえるでしょう。調達した資金の使途は、「航空・宇宙分野参入のための鋳造設備増強、3Dプリンターの導入を図ること」とIRされています。

翌2015年にコンセプトセンターに第4期棟が増設され、機械加工と検査業務を拡充しています。



③ 福利厚生

第23期(N-1)になると、役員および従業員へストックオプション(SO)を配布しています。潜在株式を含む議決権ベースで約8.9%を発行したことになります。IPOが見えてきた中、ベンチャー企業が役員や従業員へ報いることのできる重要な福利厚生と言えるでしょう。




4. Valuation

時価総額および一株あたり株価の推移は下記の通りとなります。ここで興味を引くのは、IPO時点の公募価格が960円と株式分割時点の一株あたり株価の1,000円より下がっている点でしょうか。しかし初日終値では1,599円と公募価格を大きく上回っています。




5. さいごに

JMCは、多額の設備投資が必要となる製造業にあって、外部調達は実質2回しか行っていません。これは業績が堅調に推移したため、キャッシュフローがうまく回っていたことが寄与しているのかもしれません。また3Dプリンターという当時は最先端の製品を扱いながら、実は鋳造事業が業績の柱になっているという事業ポートフォリオの組み方も、優れた戦略を感じます。


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