資本政策(弁護士ドットコム)

更新日:2021年12月6日

2005年7月、弁護士の元榮太一郎氏により設立された弁護士ドットコム。2014年12月にマザーズに上場し、その後は6年弱で株価は約11.5倍(2020年10月末時点)にまで上昇しており、まだまだ成長は止まりそうにない。

主だって競合するサービスが無い事もあり、全弁護士数に対する有料会員および無料会員を合わせた弁護士の登録者の割合は、2020年6月時点で50%に近づくほどの存在感を見せています。

上場後に電子契約書事業のクラウドサインを打ち出し、業績拡大を加速させる弁護士ドットコムですが、今回はIPOするまでの資本政策に焦点をあてて述べていきたいと思います。




1. 設立~第7期

弁護士ドットコムは、2005年7月に弁護士である元榮氏により設立されました。設立当初は資本金3,000万円で、元榮氏が100%の株式を保有する会社です。

設立から2010年3月期(第5期目)まで業績面では苦戦していたものの、第6期目には黒字となり第7期目には債務超過を解消しています。弁護士法が規定される非弁行為に抵触する可能性が有ったためか第7期目まで外部から資金調達していません。元榮氏が弁護士ドットコムに先立ち開設していた弁護士法人オーセンスから、資金を貸し付けることでキャッシュフローを回していたようです。


                出典:弁護士ドットコムの目論見書



2. 第8期(N-2期)

第8期目を迎えると、IPOに向けて資本政策が動き出します。

2012年8月にDGインキュベーションから、初の外部調達となる1億円を種類株式により調達しています。この時のPreバリュエーションは14億円であり、Postで持株比率は6.68%程度を外部に渡したことになります。

その後、2013年2月には株式会社価格ドットコムから普通株式で2,000万円を調達しています。




3. 第9期(N-1期)

2013年6月に大前研一氏と2度目となるDGインキュベーションから合計28百万円を調達し、外部からの資金調達を終えます。第9期以降は利益体質になっており、後から振り返ると、この外部からの資金調達は不要であったように見えますが、第8期が赤字であり万全を期したものと推測されます。





4. 福利厚生

第9期である2013年9月に、当時の取締役2名に対し13百万円で第三者割当増資を行っています。この第三者割当増資は資金調達というよりは、IPOが見えているタイミングで、役員2名のインセンティブとするために割当てたものであると推測されます。

また2013年9月から2014年10にかけてストックオプションを8回発行していますが、これらSOは役員や幅広く従業員へ割当てたもので、IPOを目指すベンチャーに勤める従業員にとっての最大のインセンティブとなるものでしょう。




5. 資産管理会社

2012年7月に資産管理会社であるTIM株式会社(以下、TIM)を設立しています。しかし設立時点では特に株式を移動させておらず、活用した形跡は外部からは読み取ることはできません。

設立から1年以上経った2014年3月26日に、元榮氏からTIMへ3,3,46,300株(53.4%)移動させています。IPOがほぼ見えているタイミングであるものの、株価が高くならないうちに弁護士ドットコム株式を移動させたものでしょう。N-1期末近くでの株式の移動であることからIPO前の最後のタイミングとも言え、やや遅い株式の移動であった感じも受けます。

いずれにせよ、これによりTIMは弁護士ドットコムの筆頭株主となるとともに、贈与税・相続税を中心とする節税対策を行える箱としての準備が出来上がっています。




6. さいごに

今回は詳しく触れませんでしたが、弁護士法の非弁行為との兼合いから弁護士ドットコムは外部からの資金調達がしにくい環境にありました。このためスタートアップの苦しい頃は弁護士法人から資金を回しており、外部からの資金調達したのはレーターステージになってからとなります。これは比較的珍しいケースとなっています。

しかし多くのSaaS系のベンチャー企業は、SaaSの特性上、最初にまとまった資金が必要なります。この資金確保のためにVC等から調達するか、既存の別事業でキャッシュを捻出しSaaS事業へ補填することが一般的でしょう。この点、弁護士事務所で稼いだキャッシュを弁護士ドットコム事業に回して資金需要を賄っていた資金の流れは、参考になるかと思います。

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