資本政策(マクアケ)


クラウドファンディング(以下、クラファン)が身近になってきましたが、その立役者の一人ともいえる株式会社マクアケ(以下、マクアケ)。マクアケはMakuake事業(クラファン事業)を目的に、株式会社サイバーエージェントの100%子会社として設立されました。今回はマクアケがどのようにして2019年12月のIPOまでたどり着いたのか、その資本政策を研究してみましょう。




クラファンの種類

クラファンは、リターンの提供方法により、寄附型、購入型、投資型に大別されますが、Makuakeは購入型に該当します。つまり支援者に製品やサービスを購入してもらうことを目的としているクラファンとなり、いわゆるB2Cビジネスにフィットするプラットフォームです。これは人気があるジャンルが、プロダクト系の分野と飲食分野であることからも伺えます。




ビジネスモデル

主な事業はMakuake事業であり、クラファンのプラットフォームを提供するサービスとなります。大まかな流れは下記(Ⅰの部より抜粋)のようになります。



① 新しい製品やサービスを実現したい企業や個人(プロジェクト実行者)が申請をする。

② マクアケの担当者が内容を検討や助言を行い出品する。

③ 個人等(プロジェクト支援者)がプロジェクトを支援する。

④ プロジェクトが成立すると、マクアケはプロジェクト実行者から一定の手数料を得る。


支援提供方法には目標額に到達いかんにかかわらず集められた支援額がプロジェクト実行者に渡るAll-In方式と、目標額に到達しない限りプロジェクト実行者に支援額が渡らないAll or Nothing 方式があります。


クラファン事業に付随し、「Makuake Incubation Studio」サービスという新事業を創出するために戦略立案や事業計画支援等のインキュベーションサービスや、ECサイト運営サービス、広告配信代行サービス等を行っていますが、今回は割愛します。


プロジェクト実行者から手数料を徴収するビジネスモデルであることから、典型的なプラットフォーマーであり、利用者や参加者が増えれば増えるほど、つまり魅力的な出品を募ること、および一般的な認知度を高める事が売上増加のポイントとなります。




役員

① 役員構成

経営陣の中心的メンバーである中山亮太郎氏(代表取締役)、坊垣氏、木内氏、中山豪氏は、いずれも株式会社サイバーエージェントからのメンバーであるようで、IPO後の2022年9月期末でも在籍していることが確認できます。このためスタートアップで散見される、設立当初メンバーの喧嘩別れは無かったようです。また途中で入社し、執行役員CTOを務めていた生内氏が、上場後に取締役になっている。


② 役員報酬

取締役の平均年収は8,370千円となり基本報酬以外の報酬は無いことを考えると、スタートアップ企業であってもそれほど高くはないと言えるでしょう。 同様に社外役員および監査役の平均報酬も、1,568千円と3,200千円と一般的な水準であると考えられます。




従業員

① 給与水準

平均給与は5,817千円かつ平均年齢31.2歳(Ⅰの部)であるため、ベンチャー企業としてはそれなりの給与水準が支払われている印象です。


② 平均勤続年数

同じく平均勤続年数が1.5年と開示されています。従業員数が下表のように増加傾向にあり、特にIPO(2019年12月)の直前期および直前前期に人員が増加しているため、ベンチャー企業にしてはそれほど退職者数が多くなかったことが推測できます。給与水準と合わせてみると、従業員には比較的優しいベンチャーだったのかもしれません。


   



資本政策

① 株主割当増資

マクアケはサイバーエージェントの100%子会社として設立され、2014年4月30日および2015年3月30日はサイバーエージェントから追加出資を受けています。設立から2016/9期までは赤字続きであったため、不足する資金の埋め合わせとみることが出来るでしょう。


② 第三者割当増資

2016年12月1日にファンドと取締役を対象に第三者割当増資を行っています。ここでは株価が23,566円/株とそれまでの50,000円/株から安くなっている点が目を引きます。なぜならベンチャーが外部から資金調達をする際、一般的に株価を右肩上がりにする傾向があるため、いわゆるダウンランドになるからです。

しかし2016/9期まで赤字続きで実質的に株価は下落していること、既存株主がサイバーエージェントしかいないこと、役員という個人から出資を受けるため株価を低くしたかったことなどから、ダウンランドにしても問題は生じなかったのでしょう。



③ 新株予約権

新株予約権はすべて役員および従業員へ発行したもので、いわゆるストックオプション(以下、SO)です。黒字化を達成しIPOの確度が高まった一方で株価は安く、インセンティブとしては最高のタイミングであると言えるでしょう。なお、2019年9月4日のSOは、後にCTOとなる生内氏が入社したため生内氏のみ対象に付与したもので、事実上2017年4月12日の発行でインセンティブプランは完結しています。


④ 第三者割当増資

2017年9月30日は堀越賽世氏から約47,990千円の出資を受けています。ちなみに堀越賽世氏は俳優とⅠの部に記載されていますが、市川海老蔵氏の事です。


⑤ IPO

IPO前の発行済株式総数が9,986,000株であったところから980,000株を公募増資し、10,966,000株となっています。売出しはサイバーエージェントとKSK Angel FUND LLCが合計1,565,000株(14.27%)であるため、公募の8.94%と合わせてマーケットには23.21%が流通したことになります。


⑥ まとめ

IPO時点でサイバーエージェントが55.6%保有しており親子上場となっている点に一定の懸念があること、俳優への第三者割当増資をのぞけば、非常にシンプルで予定通り進んだ資本政策であったのではないでしょうか。設立直後の赤字続きの苦しい時にサイバーエージェントに頼れたことが、黒字化後の資本政策をシンプルに進めた大きな要因だと考えられます。




さいごに

クラファン事業のパイオニアとしてIPOを果たしただけに、IPOしてから約1年は株価が好調に推移していた一方で、その後は下降のトレンドにあります。2022年4月末の株価は1,732円となっており、今後どのように新たな魅力を見せるのか真価が問われます。

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