資金が潤沢な起業家でない限り起業直後は資金繰りがタイトであることが一般的であり、どのようにキャッシュを回していくのか考えなければならないはずです。資金が足りなくなる見込みであれば会社外から資金を調達することになりますが、資金調達の道標となるものが「資本政策」です。それでは、今回は資本政策総論について触れていきます。

資本政策の概要
「資本政策」とはIPOまでの株主構成およびIPO後の株主構成、事業計画および設備投資計画、創業者利益の実現、事業承継対策等の項目を鑑み資金調達の方法を考え、創業者の持株比率と株主構成の適正化を図ることです。
具体的には、下記の事項のバランスをとる事が資本政策の目的になります。
(1) いつ、誰から、幾らを資金調達するのか
(2) 創業者および経営陣の持株比率をどの程度とするのか
(3) 創業者および経営陣が幾らのキャピタルゲインを得られるのか
(4) IPO後の株主構成をどうするのか
IPOをゴールに逆算
エクイティファイナンスは、「創業者の持株を渡し、資金を会社に入れてもらう」取引と解釈できます。したがってエクイティファイナンスをすればするほど創業者の持株比率は下がるというトレードオフの関係にあります。このため創業者が失う持株比率に見合うだけの資金調達額や創業者利益が得られるように、資本政策を立案する必要があります。

資本政策を考えるとき、まずIPO直後の持株比率を一定以上保有している状態をゴールとして設定すると良いでしょう。
第1ゴール:創業者および役員等で2/3超の保有
第2ゴール:創業者および役員等で過半数の保有
知っておくべき上場審査基準
IPOする時点では上場審査基準をすべて満たしている必要がありますが、基準の数が多いため、日頃からすべての基準を意識していられません。そこで資本政策を立案する時点では、「流通株式比率25%以上」という基準だけを頭に入れておきましょう。 これは役員およびその家族や役員が保有する法人と10%以上の大株主以外の株主が保有する株式数が発行済株式総数の25%以上となるように、公募・売出株数を決める必要があるという基準となります。
なお、先ほど「IPO直後の持株比率をゴールとすべき」と書きましたが、これはIPOする際にこの基準により一定数の株式を市場で売却することになるため、この影響を忘れないようにしておかなければなりません。
今回は資本政策概論の前半をお届けしました。後編となる次回は、資本政策の具体的な立案方法等をご紹介します。