「戦略は組織に従う」と「組織は戦略に従う」
アンゾフとチャンドラーのどちらが真実であっても、企業が継続的に事業を行うにあたり、組織づくりが重要な経営課題となるこには間違えありません。企業が成長するためには成長の段階に応じた組織づくりが欠かせず、もし適切な組織づくりができない場合は組織内は混乱し企業の成長を阻害します。
経営者の組織づくりに対する取組みや組織マネジメント方法は、その企業で働く従業員の幸福度にも大きく影響を与えるため、先を見越した組織づくりをしてきたいものです。今回は第2の難関:50名の壁について述べていきます。

第2の難関:50名の壁
1. 組織形態
組織がおおよそ50名を超えて更に拡大するのであれば、「ピラミッド型」の組織形態では機能的に限界を迎えます。つまり従業員および管理職の人数が増えると、タスク量も比例して多くなるため、オーナーが管理者を管理することも手間がかかるようになります。
更に成長した組織をつくりたいのであれば、管理職が2層になる「多層ピラミッド型」と呼ばれる組織形態へと変化し、複数の部門を掌握する部長職を設置する組織構造が考えられます。

2. 顕在化する問題点
①部長の能力
部長の行動パターンで頻繁に見かけるのが、オーナーの取り巻きの一員としてイエスマンに徹するあまり、オーナーの要求を無理難題も含めそのまま現場に伝え、現場を疲労させていくパターンです。多くのオーナー会社で見ることのできる組織運営ですが、部長がこの行動をしていると組織の価値を上げるよりも、むしろ下げることになるでしょう。
また、部長は課長を介して現場の情報を得ることが多いため、入手する情報は課長の個人的フィルターを通した意見や、恣意性が介入した意見であることが多いです。この点を理解していない場合、実際とは多少異なった情報に振り回されることになります。
②課長職の能力
第1の難関:30名の壁で記載した顕在化する問題点と同様のことが当てはまります。 ただこのくらいの会社規模になると複数部門ある事が多いですが、特定の部門やポストから退職者が多くなる傾向がある時は、課長に原因がある可能性が有ります。
3. 対処法
対処法としては下記のようなものが考えられます。
①部長職の育成
オーナーの指示の多くは突然のひらめきであり、かつその内容が朝令暮改となることは日常茶飯事です。そこで部長はオーナーからの指示をそのまま現場に伝えるのでなく、急いでやるべき事項、後回しに出来る事項、指示内容がすぐ変更されると予測される事項などに分類したうえで、急いでやるべき事項をまず現場に伝えるようにします。このようにオーナーと現場の間でクッション役になることが出来れば、現場は過度な負担を避けられるため退職者の減少等の結果により、部長は組織の価値を上げる存在となることが出来ます。
また現場の情報は課長を経て入手することが多くなります。ここで重要になってくる点は、課長の性格や人柄を把握しておくことです。その理由としては課長も人間である以上、情報を部長に報告するときに完全に真実を伝えるとは限らず、自己が有利になるように情報を歪曲する可能性がある点を認識しておく必要があるためです。情報の歪曲度合いは課長の性格によって異なってきます。したがって課長の性格を把握し、どの程度情報を歪曲するのか理解することが求められる能力となります。
②課長職の育成
第1の難関:30名の壁で記載した対処法と同様のことが当てはまります。
第1の難関:30名の壁を乗り越えてきた経営者には、第2の難関:50名の壁はそれほど難し組織づくりではないと考えられます。すでにある成功体験をベースに多少の工夫をすれば乗り越えることのできる壁となるでしょう。