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棚卸(後編)

棚卸という言葉は知っているものの、体系的に棚卸を理解できている方は多くは無いかもしれません。業種によっては非常に重要なプロセスであり、理解しておくべき内容といえるでしょう。それでは2回わたり棚卸について触れて行きます。今回はその2回目です。




1. 実地棚卸と(管理)会計との関係

① 在庫から生じるコストや資金負担

在庫は保有するだけでコストが発生します。

倉庫に関する賃借料および水道光熱費、運送費、保険料、在庫が陳腐化した場合の処分費用などが、会計上の各々の科目に計上されることになります。また無駄な作業が増加したことによる歩掛りは人件費として計上されますし、陳腐化および減耗した在庫は棚卸評価損や棚卸減耗損に計上されます。従って必要のない在庫が増えれば、それだけ不要なコストが増加することになります。


また、在庫は企業の資金が形を変えた資産と解釈できるため、在庫を保有している間はその分の自由に使える資金が減っていることを意味します。在庫でなく現金として保有していた場合、他へ投資することにより得られたであろうリターンは機会損失を意味します。

更に、当該資金を借入金や株主資本で賄っていれば、金利や株主資本コストが発生していることにもなります。この点を理解するためには一定の専門知識が求められるため、工場や倉庫の現場では理解されていないことが多いです。従って現場に理解を深めてもらうように働きかけることは、管理部門の責務かもしれません。


以上のようにコスト面に注目すると、滞留在庫、不良在庫は収益には貢献しない一方でコストが発生することになります。このような在庫は、まさに「罪庫」ですね。



② 最適在庫量の基礎情報

上記では在庫を保有するデメリットを記載しましたが、実際はデメリットばかりではありません。在庫を保有することで欠品を回避できるため、結果として受注機会損失を回避できるようになります。また得意先からの急な注文に対して対応できた方が、長期的な信用を得るために有利であることは言うまでもありません。


このため欠品を防ぎながら在庫量を減らせる限界在庫量いわゆる「最適在庫量」で管理できれば、利益を最大化することができます。最適在庫量を決定するにあたり、実地棚卸から得られる情報は在庫の実態を知る上で非常に重要な情報となります。




2. 実地棚卸の方法

① 実地棚卸の種類

実地棚卸は、ある時点で工場・店舗・企業等が保有する在庫を全て一度に棚卸をする「一斉棚卸」と、作業や業務を止めることなく一部の棚や在庫の種類などに分類し、順番に棚卸しを実施する「循環棚卸」に分けることができます。


循環棚卸は作業を止めずに実施することが可能でありまた棚卸実施者が少なくて済むメリットがあるものの、日頃から高い在庫管理が要求されまた実地棚卸を実施する際の難易度も高くなります。従って循環棚卸を採用している企業の多くは、自動倉庫やPOSレジのような高度な在庫管理を行うことのできるシステムを導入しています。



② 実地棚卸のカウント方法

また実地棚卸は、在庫のカウント方法の違いにより「リスト方式」と「タグ(棚札)方式」に分けられます。


リスト方式は、システムから出力されたリストに基づき実際の在庫数量と一致していることを確認する方法であり、リストを新たに作成する手間が必要ないため比較的短時間で出来るメリットがあります。しかしリストに記載されていない在庫は調査対象から漏れるため、網羅性の確保という点に多少の問題があります。


タグ方式は、タグ(棚札)を用いた実在庫数量の確認方法です。この方法はタグの貼付けおよび回収作業に時間がかかるというデメリットがありますが、実在庫を網羅的にカウントできるメリットがあるため、タグ方式を採用する企業も多いです。




3. さいごに

日本の産業が製造業からサービス業へシフトしているため、マクロの視点では棚卸の必要が低下しているものの、それでも製造業等では非常に重要な手続きとなります。将来、棚卸が必要になっても問題なく実施できるように、全体像を把握してみてはいかがでしょうか。


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