ベンチャーのCEOの報酬額(第4回)

会社を新たに興し創業者となる場合に「役員報酬をいくらにすればよいのか」という意外と難しい問題に直面するかもしれません。ほとんどの創業者はそれまで自分の給料を決めた経験などなく、他の創業者もその性質上自分の報酬を開示したがらないため、参考情報を得ることが難しいものです。

ベンチャーの役員報酬についてこれから大まかな考え方を全4回にわたり説明していますが、明確な算定方法が規定されている訳ではないため、一般的に適正額と思われる目安を記載するにとどまります。ベンチャーの役員報酬を決定する際、参考情報となれば幸いです。


今回は最終回です。



5. 税務上の視点

ⅰ)税務的視点からの役員報酬水準

国税庁が発行している資料「第7表 企業規模別及び給与階級別の給与所得者数・給与額」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/07.pdf)

という統計資料が参考になります(現時点で最新版は平成30年度)。この資料によれば平均的な役員報酬は下記の通りです。

     資本金            平均役員報酬額

   2,000万円未満            605万円

   2,000万円~5,000万円未満      851万円

   5,000万円~1億円未満        1,094万円

   1億円   ~10億円未満       1,392万円

   10億円以上             1,561万円


この国税庁のデータは、役員報酬を決定する際の目安になるかもしれませが、これより高く報酬を貰ったからと言って、それによりすぐに課税されるようなことは通常ありません。



ⅱ)税務上の規定

多くの起業家は税務上の役員報酬に関する下記の3つ分類は耳にしたことがあるものの、その内容をしっかり理解はしていないのではないでしょうか。ここでは基本的な部分のみを解説していきます。

   (ア) 定期同額給与

   (イ) 事前確定届出給与

   (ウ) 業績連動給与


(ア)定期同額給与

定義:支給時期が1か月以下の一定の期間

   毎である給与で、その事業年度の

   各支給時期における支給額又は支

   給額から源泉税等の額を控除した

   金額が同額であるもの。

一般的に毎月現金で支払われる役員報酬のことで、原則として1年間にわたり毎月同額を継続し、節税目的の手段となり得るから、金額をコロコロ変更してはダメという規定になっています。




(イ)事前確定届出給与

定義:役員に対して所定の時期に所定の金額を支払うという旨を定めて、事前に税務署に届

   出をして支払う給与のことをいいます。

これは定期同額給与でも業績連動給与でもなく、事前の届出により役員報酬と認めてもらうものです。非常勤役員のように年間を通じてコンスタントに執務していない役員の場合、毎月定額の役員報酬を支払わず、年1回まとめて支払う事が実務上行われています。このような場合にフィットする方法となります。



(ウ) 業績連動給与

定義:法人またはグループ企業などの会社の業績と役員報酬を連動させる給与体系です。

業績連動給与は「利益」「株式の市場価格」「売上高」に関連する指標を用いて、金銭、株式および新株予約権を、適切な役員報酬と認められる形で交付できるものです。ただし対象となる会社は、上場会社、上場会社の完全子会社および完全孫会社です。



ⅲ)個人的支出を会社経費とする場合

会社経費にした取引が税務上は役員賞与などに認定された場合、創業者に課税が発生することになります。個人的支出として処理している場合と比較して、会社経費と処理した場合は課税額が多くなるので注意を要します。それでは簡単な例で見てみましょう。



①シナリオA

年収1,000万円の創業者は、自宅の駐車場代36万円を自腹で支払う。また会社の課税所得は3,000万円である。このケースでは駐車場代は損金にならないので、税額は下記の通りとなる。

 創業者:(1,000万円-153.6万円(控除額))×33%≒279万円

 会 社: 3,000万円×36.5%=1,095万円

②シナリオB

年収1,000万円の創業者は、自宅の駐車場代36万円を会社の経費とし、その取引が役員賞与と認定される。この時の会社の課税所得は2,964万円(3,000万円-36万円)であった。このケースの税額は下記の通りとなる。

 創業者:(1,000万円+36万円(役員賞与認定)-153.6万円(控除額)) 

      ×33%≒291万円

 会 社:(2,964万円+36万円(損金不算入))×36.5%=1,095万円

③比較

シナリオAとシナリオBとの比較では、会社の税額は同じであるが、創業者はシナリオBの方が12万円(=36万円×33%)増えている事が分かる。このため税務上適切と認められない取引を会社経費とすると、相対的に多く課税されることになるので、この点をご留意ください。



いかがでしたでしょうか。ベンチャーの置かれている状況や創業者の考え方により、役員報酬額は異なるため、この報酬額が絶対的な適正額というように決めることはで来ません。会社ごとにポリシーを持って決定することになりますが、本稿が役員報酬の一助になれば幸いです。


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