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ダイレクトリスティング

更新日:2020年12月2日

アメリカ市場において、SpotifyやSlackがダイレクトリスティングという手法でIPOしたため、ダイレクトリスティングという言葉が注目を集めるようになりました。しかしダイレクトリスティングという言葉は聞いたことがあっても、その意味を理解できていない方も多いのではないでしょうか。そこで今回はダイレクトリスティングについて、述べていきます。

1. ダイレクトリスティング

ダイレクトリスティングとは、市場に新株を発行せず既存株主からの売出のみ行う新規上場の方法を言います。

通常のIPOで要求される複雑な手順を経なくても会社を上場させることができる一方で、新株を市場に発行することをしないため会社は資金調達をできません。つまり既存投資家、役員および従業員等がIPO前から所有している株式を、市場で売却した株式が流通することになります。



2. メリット・デメリット

Ⅰ メリット

① コストがかからない

通常のIPOの場合、幹事証券会社を決める必要があるため多額の手数料(スプレッド)がかかりますが、ダイレクトリスティングでは、新株を発行しないため証券会社への手数料が必要ありません。

またロードショーにより投資家への会社やビジネスモデルの説明会を行い、株式の発行価格を決定する手続きも省略されます。


② ロックアップ期間がない

IPO後一定期間既存株主の売却が制限されるロックアップ期間が設定されないため、IPO前から株を保有している創業者やベンチャーキャピタルは通常のIPOよりも早く株式を売ることができ、利益を早くに確定することができます。


③ 株式の希薄化が起きない

通常のIPOと異なりダイレクトリスティングの場合は公募を行わないため、発行済株式総数が増えません。したがって、希薄化が起こらないため株主にとって不利益が生じません。

Ⅱ デメリット

①資金調達ができない

ダイレクトリスティングでは公募を行わないため、IPOした会社が資金調達をすることができません。


②上場後に資金調達したい場合の手続き

IPO時点で資金需要がない場合にダイレクトリスティングはマッチしますが、上場してからエクイティファインナスが必要となった場合、日本市場ではどのような扱いになるのか、不透明な部分があります。


③市場で定められる株主数

上場する際形式基準の一つとして、株主数が定められています。例えば、マザーズなら200人、東証2部なら800人の株主が上場する際に見込まれていることと規定されています。したがって、ダイレクトリスティングを行う会社は、IPOする以前から多数の株主がいる会社でないと、実質的に株主数の要件を充足することが難しくなります。


3. まとめ

米国でダイレクトリスティングを行う会社は、既存投資家が株式を売って利益を得る場を確保することを目的にしているようです。もし日本市場でダイレクトリスティングを行うのであれば、下記のような特性を持つ会社となるのではないかと推測します。

・ 誰もが知っているベンチャーやビジネスモデル

・ 資金ニーズがない

・ 株主がすでに多数いる

ちなみに、実は日本でも1999年に杏林製薬がダイレクトリスティングによる上場を行っているそうです。日本では後にも先にもその1件だけだそうですが、20年以上も前に行われていたことは驚きですね。



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