スピンオフ(後編)


スピード感のある事業再編等を可能にする制度を整備する一環として、特定事業を切り出し独立会社とする手法として、平成29年度税制改正によりスピンオフ税制が導入されました。組織再編税制が絡むためやや理解しにくい部分もありますが、経営戦略を迅速に達成する一つの手段として理解しておくとよいでしょう。それでは今回はスピンオフについて述べていきます。





5. 資本政策上の注意点

① 事業の将来性

ⅰ) 将来性のない事業

切り離したい事業が将来性のない場合、スピンオフするよりも事業譲渡や会社分割により事業を売却のうえ対価として資金を獲得し、それを将来性のある事業へ投資する方が、株主としては望ましく、またそのような経営が経営者に求められと考えられます。したがって一般的には、将来性の無い事業の場合はスピンオフを選択せずに、事業を売却する選択となるでしょう。


ⅱ) 将来のある事業

将来性のある事業の場合、株主はその事業の株主であり続けたいと思うこと多いでしょう。他の事業から切り離すことにより、他事業の人間関係等のしがらみを解消し意思決定を迅速に行えるようにし、また業績を明確にして更なる成長を達成して欲しいと望むケースが多くなります。特にIPOを目指す事業の場合、IPO審査に他事業が足かせとなることが考えられるため、スピンオフは最適な組織再編の在り方になると考えられます。


このように切り離したい事業が将来性をもう事業である場合、特にIPOを目指す場合にスピンオフは相応しい方法であると言えるでしょう。IPO時にスピンオフを活用した事例としては、ガイアックスからスピンオフ上場したアデッシュ、コシダカHDからスピンオフ上場したカーブスHDの2社があります。



② 株主構成

スピンオフを実施すると子会社の株主構成は劇的に変更されます。スピンオフ実施前は親会社1社のみが株主であったものの、スピンオフ実施後は親会社の株主が大部分を保有することになります。このため、親会社の株主構成が非常に重要となってきます。

スピンオフを活用してIPOを達成する場合、資本政策の観点からIPO後にも創業者やオーナーの支配権が継続するのかどうかという点が、経営の安定化や創業者利益の達成と密接に関係してきます。スピンオフ後の経営安定のためには、親会社の株主に大株主が存在し、スピンオフ後つまりIPO後に大株主として継続保有してもらえることが条件となるでしょう。




6. スピンオフの更なる拡大の可能性

完全子会社以外のスピンオフや完全子会社であっても、一部株式を残す場合は適格組織再編に該当することが無いため適格株式分配に該当することは出来ず、スピンオフを活用しようとしても使い勝手の悪い部分がありました。

そこで段階的に子会社を切り出そうとする場合にもスピンオフが活用できるように、一部持ち分を残したスピンオフや完全子会社以外もスピンオフをできるように制度を拡充するように、経済産業省が令和4年度税制改正で実現するように要望を出しているようです。




7. さいごに

スピンオフ税制が導入されて数年経過したものの、令和3年11月時点でIPOの際に活用した事例が2社しかないことを考えると、適用しやすい制度ではないと言えるでしょう。使い勝手を良くするために制度を改正し柔軟の制度設計にしていく前向きな改正については、個人的には賛成です。


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